M&Aの買い手が使える優遇税制「中小企業事業再編投資損失準備金」とは
M&Aにおいては、売り手は株式譲渡を選択した場合、譲渡益に対して2割の課税で済むため税制において優遇されているというのはご存じだと思います。
今回は、M&Aの買い手が株式を取得した場合に使える優遇税制をご紹介します。
弊社のお客様でもこれを使って株式取得によるリスクを軽減してM&Aを実行されています。
株式取得金額の70%を取得年度に損金算入でき(据置期間後に益金に算入するので課税の繰り延べですが)、中小企業のM&Aにおいては非常に効果的ですので必ず確認しておきましょう。
制度の概要
・資本金1億円以下の青色申告法人(過去3年間平均所得が15億円超は適用除外)で
・改正産業競争力強化法等の施行日から令和6年3月31日までに経営力向上計画の認定を受けたものが、
・株式取得によってM&Aを実施する場合(取得価額10億円以下に限る)において
・株式等取得価額の70%以下の金額を準備金として積み立てたときは
・株式取得年度において損金算入できる
・なお、その後5年間の据置期間経過後より5年間にかけて均等に取り崩して益金に算入されます(株式売却など取崩し事由に該当すればその時点で全額益金算入)
手続きの流れ
①M&Aの基本合意後(最終合意前)に経営力向上計画の申請・認定
②M&Aの最終合意後にM&Aの報告確認書の発行
③上記の書類及び専用の別表を添付して確定申告書を税務署に提出する
必ず余裕を持ったスケジュールで申請等を行ってください。
会計・税務処理の具体例
それでは具体的にどのような処理になるのか、M&Aにより2億円で株式を取得した場合で見ていきましょう。
いずれのケースも1.4億円が損金算入され、税率35%とすると4,900万円ほどの税金が軽減されますのでそのインパクトは大きいです。
準備金方式 申告調整不要
有価証券 2億円 / 現金 2億円
中小企業事業再編投資損失(PL特別損失)1.4億円 / 中小企業事業再編投資損失準備金(純資産の部)1.4億円
準備金方式ではPLを通すため会計上の利益が減少します。
剰余金処分方式 準備金を別表減算
有価証券 2億円 / 現金 2億円
繰越利益剰余金(純資産の部)1.4億円 / 中小企業事業再編投資損失準備金(純資産の部)1.4億円
剰余金処分方式ではPLを通さないため、会計上の利益が減少せずに法人税等の税金が減り、決算書の見た目は良くなります。
さいごに
弊社は税理士法人が母体のM&A会社であるため、このような税制優遇措置を併せてご案内できる強みがあります。
事業価値算定のご相談は無料で受け付けていますので、札幌を含む北海道エリアでM&Aをお考えの方はお気軽にご相談ください。