円滑なM&Aのために

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円滑なM&Aのために

M&Aは異なる企業文化が一つになることであり、それは簡単なことではありません。
売り手にとっては長年育てた事業を手放すため、その想いを受け止めてくれ、従業員の雇用を守ってくれる相手を選ぶことが多いです。
ここでは感情論ではなく、主に財務面や経営面から、売り手がどのような準備をしておけばM&Aが円滑に、そして企業価値を高く評価してもらえるかを考えてみます。

まず、財務面においては、

・適切な会計処理に基づく正確な財務諸表の作成
・事業に直接必要としない資産の処分
・退職給付債務や未払残業代など簿外債務を把握、整理しておく
・買い手が行う財務デューデリジェンスにおいて必要な資料をすぐに提示できる体制を
などが考えられます。

正確な財務諸表の作成は言わずもがなで、財務体制が杜撰な会社はまず敬遠されます。
当たり前に適切な会計処理、財務管理をしておきましょう。

また、事業に必要としない資産ですが、これは例えば本業とは関係のない収益不動産や高級車などです。
これは買い手が欲しいものではないため、社長個人で買い取ったり、会社分割により分社化しておくなど、M&Aをする会社からは切り分けておくとよいでしょう。

次に、経営面においては、

・経営者が現場に出なくても組織が回るように権限移譲をしておく
・昨今においては人材不足の企業が多く、人材が立派な経営資源であるため、必要な教育をしておく
・M&Aの価格算定においてはやはり利益の実績が重要であるため、利益を多く出せる仕組みを構築しておく
などが考えられます。

1つ目の権限移譲をしておくというのは非常に重要です。
経営者が営業から顧客対応から全ての重要なポジションを担っているという場合、買い手にとってはその経営者が離れることは非常にリスクになります。
つまり、その経営者に顧客がついており、その経営者だからこそ稼げるという体制は買い手にとっては魅力的ではありません。
万が一引継ぎがうまくいかず、売上が大きく下がるようなことがあればと考えるのは自然なことであり、M&Aの価格に影響してきます。

一方で、経営者が前面に出なくてもしっかり現場が回り利益が出ている会社であれば、経営者が交代しても先に述べたような顧客離反のリスクは限られますので、買い手にとってはM&Aの決断がしやすく、M&Aの価格も高くなることが多いです。