店舗M&A
店舗M&Aとは
今や店舗レス経営への転換が進んでいるなか、人々の余暇や個人の趣味嗜好を対象にサービスを行っている飲食店経営や美容室経営等においては、店舗の存在が経営を行う上で重要な要素となるでしょう。
これから新規で当該サービス業に参入しようとされている経営者や事業展開を考えている経営者にとって、どこに店舗を構えるか、どのような店であれば集客やお客様満足度を向上できるのかを考えているかと思います。
一方、今までそのようなサービスを行ってきた経営者が、事業を廃止する時に、店舗の整理に、なるべくお金や手間をかけずに処理できないかお悩みでしょう。
このように、新たに店舗を必要とされる方と、店舗を手放したい方、双方にとっていくつかの方法があります。自身の現在の状況と照らし合わせながら選択していくことになっていきます。
1)「居抜き」とは
近年、店舗型経営の事業者において、新店舗の開拓、店舗の引っ越し、店舗の閉鎖等を行う場合に、「居抜き」というスキームが人気のある手法として行われています。
「居抜き」とは、床、天井、壁、厨房、お手洗い、備え付け備品等の店舗内設備がそのまま残った状態のことを言います。
一方「居抜き」と対になる形態が「スケルトン」となります。
「スケルトン」とは、建物内にある部屋そのもの状態のことを言います。「スケルトン」のメリットは、入室側の方で1から全て内装にこだわりたいケースです。しかし、デメリットはやはり、入室側、退出側、双方ともに費用が大きく掛かってしまうことです。
(ちなみに、従来は「スケルトン」、すなわち退出される際には元とおりに戻すために、費用をかけてから退出しなければならない契約がほとんどでした。)
そこで、「居抜き」であれば、極端に言えば、退出側は入室側と相談して廃棄せざるを得ないモノのみ廃棄し即退出することが可能であり、入室側は必要な消耗品を購入後すぐにでも事業を開始することが可能となります。
2)居抜きのメリットとデメリット
<新規で入室を考えている方のメリット>
・設備があらかじめ揃っているので、設備投資を抑えることができる。
・内装工事にかかる期間を抑えられるので、早期に事業を開始することができる。
<新規で入室を考えている方のデメリット>
・自分の理想とするデザインへ変更しづらい面がある。
・設備の劣化により近い将来、修繕費などがかかってしまう可能性がある。
<退出される方のメリット>
・スケルトンにする撤去費用を抑えることができる。
・売却価値のある備品などを売却できる可能性もある。
<退出される方のデメリット>
・退室側のデメリットはあまり無いですが、入居時の契約内容やリース資産の把握などを退出前に整理しておく必要があります。
3)様々な条件を追加するケース
よりM&Aに近い形態として、上記の物件の「居抜き」に様々な条件を付加して、引継ぎを行うケースも存在します。例えば次のような形態もあります。
1.店舗かつ従業員の雇用を引き継ぐ
飲食店などの従業員はその地域から雇用するケースがほとんどで、人手不足が叫ばれている中、新規開業や店舗拡大時に、新たに募集をかける費用や時間を削れることにメリットを感じる方などが検討するスキームとなっているようです。
2.業務委託というスキーム
利益はでているのだが、他に時間を割きたい経営者や高齢で現場に立つ時間を無くしていきたいと考える経営者にとっては、新たに飲食店や美容室などで独立したいと考えている方の修行も兼ねて、業務を委託し、将来的にはその事業を全て引き継いでもらうような未来型の店舗M&A経営といったスキームを行っている方もいるようです。
4)事業M&A
利益が出ているが事業を辞めようとしているケースでは、「居抜き」のみならず、事業そのものに価値がある場合もありますので、通常のM&Aの可能性も模索した方が高く事業を売却できる可能性があります。
5)注意点
主に「居抜き」物件の契約は、「造作譲渡」、「転貸契約」といったものになります。契約についての専門性のある方から気になる点の説明を必ず受けるように心得て下さい。
また、買い手側は、立地や内装、間取りだけではなく、残された設備の状態や以前の当該店舗の評判なども事前にチェックしておく必要があります。事業開始後に「かえって高くついた」なんてことにならないように事前チェックを行いましょう。